中国では、会社の実情に基づき地元労働部門の認可を得て、特殊労働時間制として「不定時勤務制」と「労働時間総合計算勤務制」を実施することができます。
特殊勤務時間制とは、
中国国内の企業が生産の特徴或いは業務の性質が特殊であることにより、国家が規定する標準勤務時間制度(1日8時間、週40時間の勤務制)を実行できない場合、審査批准機関の許可を経て実施する勤務制をいい、不定時勤務制と労働時間総合計算勤務制があります。
労働時間総合計算勤務制とは、週・月・四半期・年などを周期として勤務時間を総合計算する勤務時間制で、以下の人員に適用することができます。
① 交通、鉄道、郵便、水運、航空、漁業等業務内容の特殊性により、連続作業が求められる労働者
② 地質、資源探査、建築、製塩、製糖、旅行など季節と自然条件による制限を受ける業種の労働者
③ その他労働時間総合計算勤務制に適合する労働者
不定時勤務制は、勤務の開始・終了及び連続性が固定的ではない勤務時間制で、以下の人員に適用することができます。
① 高級管理者、外勤、営業、当直人員及びその他標準勤務時間に基づくことができない労働者
② 長距離輸送人員、タクシー運転手、鉄道、港湾、倉庫積載員及びその他業務性質により機動性が求められる労働者
③ その他生産特徴、業務の特殊性や職責範囲の関係により、不定時勤務制が適用される労働者
労働時間総合計算勤務制の残業代計算
① 労働時間の計算
実務上、労働時間総合計算勤務制の労働時間は、通常、月・四半期・年などを周期として以下のとお り計算します。
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労働時間 |
年 |
年労働日:365天/年-104天/年(52週の土日)-11天/年(法定休日)=250日/年
労働時間:250日×8時間=2000時間 |
四半期 |
四半期労働日:250日/年÷4季=62.5日
労働時間:62.5日×8時間=500時間 |
月 |
月労働日:250日/年÷12月=20.83日
労働時間:20.83日×8時間=166.64時間 |
② 残業時間及び残業代の計算
- 上記①のとおり、労働時間の平均勤務時間と週平均勤務時間は、基本的に標準勤務時間制度に(1日8時間、週40時間の勤務制)一致しなければなりません。又、残業時間の制限は標準労働時間制と同じく、月平均で36時間を超えてはなりません。
- 労働日が土日に当たる場合、正常労働日とし、休日出勤として扱いません。周期の総労働時間が上記①の労働時間基準を超える場合は、『労働法』第44条第1項により150%を下回らない賃金報酬を支払わなければなりません。
- 労働日が法定休日に当たる場合は、『労働法』第44条第3項により300%を下回らない賃金報酬を支払わなければなりません。
不定時勤務制の残業代計算
① 不定時勤務制を適用する労働者について、法定休日の時間外労働の場合を除き、残業時間を管理し、 残業代を支給する必要がありません。
② 法定休日に勤務した場合は、『労働法』第44条第3項により300%を下回らない賃金報酬を支払わなければなりません。
「不定時労働制」を採用は残業代を削減する為の手段ではありませんので、残業代を支給しない代わりに、「管理職手当」、「外勤手当」等、恒常的に発生する残業代に見合った代替となる手当を支給しなければ労働社会保障局の認可が得られません。
また一般的に、管理職に「不定時労働制」が認められるのは、部長級以上であり、全ての管理職に認められるものではありません。
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