中国における市場経済政策の浸透に伴って、品質に関する紛争が増加しています。外国企業、外資系企業、とりわけ日本企業に関わる製品品質紛争は増加傾向にあります。製品別でみれば、自動車、住宅、携帯電話、食品に関する苦情が近年増加しつつあります。また、今まではモノの品質に対する苦情が大半でしたが、サービスの質に対する苦情も大幅に増えています。
クレームの取扱機関
中国で品質・サービス問題があった場合、クレームの窓口としては消費者協会があります。同協会は、中央官庁である国家工商行政管理総局の傘下にある全国的な消費者保護団体であり、消費者権益問題に関する関連部門への報告・提案、消費者クレームに基づく調査および調停、品質・サービス問題の公開及び評価などをしています。各地方においては、その地域の消費者協会及び他の関連団体があります。
実際に消費者協会の調停をもとに和解に至ったケースは、外国企業にも数多く存在しています。なお、品質・サービス問題の公開・評価は、マスコミを通じて行われます。外国企業が公開の対象になった場合、企業が受ける影響は非常に大きいことから、消費者からクレームが提起されたり、みずから問題を発見した場合には、同協会に報告して事実関係などを十分に理解してもらうことが重要です。
消費者協会以外に、中央官庁である国家品質監督検験検疫総局の下部組織である「品質万里行促進会」も製品品質問題を取り扱っています。
また、1999年に消費者告訴ホットラインが設置され、毎年3月15日の「国際消費者デー」には国全体で消費者権益保護をテーマとしたキャンペーンが行われています。
裁判所における解決
製品品質問題の紛争については、消費者からPL訴訟または不法行為訴訟が提起されることが考えられます。
これらの場合には、会社側は、被害者の財産損害または人身損害について賠償責任を負うことを命じられる可能性があります。また、同一製品による被害者が多い場合には、集団訴訟に発展する可能性があります。とくに最近、一部の弁護士がマスコミを通じて被害者を募集するケースもみられ、今後、集団訴訟の増加が予想されます。クレームの段階で早期且つ適切に対応し、訴訟への発展を防ぐことが重要となります。
また、通常、会社側は被害者の損害額を賠償することとなりますが、中国では、被害者への懲罰賠償制度が確立されています。即ち、重大な品質問題を公表しなかったり、取扱説明書の重大な誤りを知りながらそのまま放置して販売を続けたりする行為が、詐欺的な行為と認定された場合には懲罰的賠償責任を負う(販売価格の2倍)ことになります。
加えて、罰金その他の刑事罰が科されることもありますので、製品の品質には細心の注意が必要です。 |