人事労務管理規則の標準例
以下は人事労務管理関連の会社規則でカバーすべき内容の標準例です。
この中で、人事労務管理上の諸問題に対応するうえで特に重要なのが就業規則です。下記②の内容のみを就業規則に規定している場合もあれば、①~⑤までをまとめて就業規則としている場合もありますが、労務紛争処理との関係で特に重要なのは②のうちの「労働規律」、「禁止行為」、「賞罰(中の処罰)」に関する規定と言えます。
項目 |
主な内容 |
① 労働人事管理 |
従業員の採用・入社・退社時の事務手続き
労働契約の締結・解除・終止要件、経済補償金の支払い基準
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② 日常就業管理 |
労働時間、休息休憩、労働規律、禁止行為、賞罰、給与構成、各種手当、休憩時の給与、社会保険・福利制度 |
③ 出張関連 |
出張経費支払い・精算基準 |
④ 安全衛生管理 |
安全衛生管理体制、事故発生時の連絡体制、労災防止 |
⑤ 研修関連 |
国内(新人・定期・幹部)研修、海外研修 |
⑥ 人事考課と給与 |
職能等級制度、職能等級毎の会社期待役割、給与・賞与考課
(考課項目・考課基準)、考課実施手順、昇給・昇格基準
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運営上の留意点と対応策
① 労務紛争に関して最もトラブルが多いのが労働契約の解除に関する問題であり、中でも労務紛争事例の多いのが懲戒解雇です。懲戒解雇が可能となるケース(会社側の一方的意思により労働契約を即時解除できるケース)として、『労働契約法』には以下の通り規定されています。
『労働契約法』第三十九条
労働者が以下の状況のいずれかにある場合、雇用単位は労働契約を解除する事ができる。
---(中略)---
(二)雇用単位の規則制度に重大な違反をした場合
(三)重大な職務怠慢や私利私欲により雇用単位の利益に深刻な損害を与えた場合
---(後略)---
② 懲戒解雇の場合には経済補償金の支給が不要ということもあり、懲戒解雇を実施すれば、その正当性をめぐって解雇された従業員からの労働仲裁がほぼ確実に提起されます。労働仲裁が起こされた場合、 会社は懲戒解雇実施の客観的根拠を書面で示して会社処置の正当性を証明しなければならず、上記第 三十九条にある「規則違反」や「職務怠慢」、「私利私欲」に該当する事実関係の有無及びその程度の 「重大さ」や会社が受けた損害の「深刻さ」が争点になります。しかし、「規則制度への重大な違反」、 「重大な職務怠慢や私利私欲」とは具体的にどのような事象を指すのか、また、どの程度の問題が「重大」であり「深刻な損害」と認識されるのかについて定義した法律規定がある訳ではなく、会社自身 がこれらの要件を就業規則の中で具体化し定量化する必要があります。
③ 具体的には、先ず各社において求められる「労働規律」を規定し、これに反する「規則違反」、「職務怠慢」及び「私利私欲」に該当する事象を「禁止行為」として規定します。当然ながら、全ての事象を網羅的にリストアップすることは不可能ですので、「業務遂行に対する阻害行為」、「社内秩序の攪乱行為」といったカテゴリーを設定し、これらに該当する事象を例示する格好で「禁止行為」を規定 するのが現実的なやり方と言えます。 |