企業に過去分の累損がすべて無くなって、税引前利益が計上される場合、法定積立金を積立てた後の剰余金が配当可能な原資となります。
すべての過去分累損消去が前提
- 企業の年度欠損は5年まで繰越しできるというのは、中国の税務規定です。従って当年度に利益があったとしても、過去5年間に発生した損失累計は当年度税引き前利益から控除して、その後の残余利益がその年の企業所得税の対象となり、企業所得税を納税した後の「税引き後利益」が配当可能利益となります。
- 6年以上前の累損は当年度税前利益から控除できませんので、上記の「税引き利益」から累損消去しなければなりません。その上で「税引き後利益」が残れば、これが配当可能利益となります。
法定積立金の積み立てが前提
税引き後の配当可能利益があれば、出資者へ配当を行う前に、先ず法定積立金を控除して積み立てる必要があります。累損があって税引き後利益が無い状態では、まず累損の消去が先決ですので、法定積立金を積立てる必要はなく、逆に利益準備金などの積立てがあればそれを取り崩して累損消去に当てます。
外商投資企業の三項基金の積立て計上
中外合弁企業の法定積立金には下記の「三項基金」と言われる三種類があり、外商独資企業には利益準備金と従業員奨励福利基金の二種類があります。
(1) 利益準備金:
利益準備金は、董事会や株主会の決定によって年度欠損の補てん、増資等の再投資のために使われ、外商独資企業には、『中国会社法』に「利益準備基金は、累計で資本金の50%になるまで当年度の納税後利益の10%を積み立てる」との強制規定があります。資本金の50%に達した場合は、それ以降の年度では利益準備金を積み立てる必要はありません。
(2) 従業員奨励福利基金:
従業員奨励福利基金は、『中外合弁経営企業法』及び『外資企業法実施細則』によって積み立て、負債勘定として計上義務がありますが、中外合弁企業も、独資企業も董事会の決議で従業員奨励福利基金の積み立て率を0%にすること、また既に積み立てた税引き後の従業員奨励福利基金は資本勘定に戻しいれることが可能となりました。現在では董事会により積立率ゼロと決議して積み立てないのが一般的です。
(3) 企業発展準備基金:
中外合弁企業にのみ適用されるものですが過去には社宅の購入などに充てられましたが、現在では外資系企業も会社資産として社宅を持つことが出来ますので、ほとんどの中外合弁会社において董事会が積立率ゼロを決議して積立てていません。 |