『労働契約法』は、会社に“試用期間”という特殊な期間を与え、採用条件に符合しない従業員との労働契約を随時解除する権利を与えていますが、実務においては、当該理由には事実の根拠が必要で、簡単に濫用すべきものではありません。会社は、募集・面接・採用・試用期間の審査及び告知、記録の保管等の各段階における管理を完備する必要があり、それぞれのステップを慎重に処理してはじめて、“違法解除”のリスクを回避することができます。労働争議発生時に、会社が充分で効果的な証拠を提出できるかどうかは、会社の雇用管理が規範的であるかどうかということでもあります。
会社は、合法的で明確な“採用条件”を設定すること。
会社は、以下のような形で採用する職場の勤務内容、職責及び人員要求について具体的に描写し、“採用条件”の形式で記載し、実情に照らして運用する必要があります。
① 職位職責、作業内容の要求が完全な募集広告を有し、保管に注意する(但し、募集広告だけで証明とするのは、証拠不足)。
② 具体的な職位職責、作業任務、能力要求について完全に約定した労働契約である。
③ 試用期間審査基準について規定した規則制度がある(民主的な手順を経た規則制度で、合法で有効であること)。
④ 労働契約の付属書として、試用期間の審査内容を明確に約定した『職位説明書』或いは『試用期間審査要求』等々がある。
“採用条件”は、事前に従業員に告知すること。
双方の権利と義務を明確にし、試用期間に関する問題を合法的且つ公平に処理するために、会社は、入社手続きを行う際に、“採用条件”及び関連の規則制度を適時従業員に告知し(必要に応じて、研修方式をとり)、従業員に確認署名を求める必要があります。
会社は、試用期間中に採用条件の審査を行い、審査記録を保管すること。
従業員が“採用条件”に符合しないことの事実認定には、会社側が立証責任を負わなければなりません。社内で試用期間の審査や採用の流れを定めた審査制度を制定し、関連部門が新入社員に対する審査の責任を負う必要があり、客観的な事実に基づき合理的に審査評価を行い、できるだけ標準化して、審査記録を保管し、更に従業員に確認書への署名を求めてもよいでしょう。
会社は、契約期間満了までに、審査後の書面決定を従業員に送達すること。
会社は、書面形式で、審査結果に基づき下した決定を従業員に送達する必要があります。また、会社は、試用期間の期限に注意し、試用期間満了後にはじめて審査や通知を思い立つようなことを回避しなければなりません。試用期間が一旦満了してしまえば、たとえ充分な証明証拠があっても、会社は「試用期間中に、採用条件に符合しないことが証明された場合」(『労働契約法』 第39条第1項)を根拠として労働契約を解除することはできなくなります。
総合すると、試用期間に関する流れや制度を重視・整備し、合法的な手順を履行し、関連の証拠を充分に保管することは、従業員の職業選択権を保証するばかりでなく、企業イメージを保護し、企業の正常な 経営へのマイナス影響を回避し、企業の不必要な損失を減らすことにもなるということです。 |