試用期間内の労働契約解除について経済補償金の支払いが必要かどうかは、労働契約を解除する理由によります。『中華人民共和国労働契約法』第37条及び第39条の状況に該当する場合には、経済補償金を支払う必要はありません。
試用期間中の労働契約解除は以下の状況に分けられます。
法律が規定する主要条件(解除理由) |
対応する 条文 |
経済補償金支払の要否 |
備考 |
本人からの退職提出 |
第 37 条 |
不要 |
リスク無し |
試用期間中に採用条件に符合しない |
第 39 条 |
不要 |
会社側が要立証 |
会社から解除を要求 (従業員が重大に規則違反したことによる) |
第 39 条 |
不要 |
会社側が要立証 |
協議一致解除 |
第 36 条 |
要 |
リスク無し |
従業員から解除を要求(会社の契約不履行による) |
第 38 条 |
要 |
従業員側が要立証 |
会社からの事前通知による解除(医療期間が満了しても勤務に復帰できないことによる) |
第 40 条 |
要 |
1ヶ月前告知、または通知代替金の支払いが必要 |
会社からの事前通知による解除(勤務の任に堪えないことによる) |
第 40 条 |
要 |
よく「試用期間満了後に正式契約を締結する」という言い方を耳にしますが、労働契約を締結している以上、試用期間中であっても既に正式契約を締結していることになり、試用期間も正式な労働契約期間の一部であり、理由なく会社都合で随意に労働契約を解除できる訳ではありません。この考え方は以前より不変ですが、『労働契約法』が施行される以前は、「試用期間は会社都合で随意に契約解除ができる」という解釈が雇用者側・被雇用者側双方に広く定着していて、実際そのようにしても争議になることはありませんでした。
しかし、『労働契約法』の施行によって従業員保護が明確になり、『労働契約法』第21条に規定されているように、“雇用単位は、試用期間に労働契約を解除する場合、労働者に理由を説明しなければならない。”ことが明確化された訳です。ゆえに、実務操作においても、もし雇用単位が不当な理由或いは理由不充分で契約を解除した場合、労働争議が起こりかねません。
実務上は、上表の状況のうち、“試用期間中に採用条件に符合しない”を理由に労働契約を解除するケースが大多数を占めています。採用条件に符合せず法に基づき解除する場合、本来経済補償金の支払いは不要ですが、採用条件に符合しないことをどのように証明するのかが、常々会社と従業員との間の争議の焦点となります。会社側が、試用期間中は随意に契約解除できると考えて、新規従業員採用の際に募集・面接・採用或いは試用期間中の審査等の各段階における管理を重視せず、その後いざ労働争議が発生した時に、会社は有利な証拠を提出して“採用条件に符合しない”ことを証明できずに、受け身に陥ることケースも尐なくありません。会社の違法解除であると判定された場合、従業員は、『労働契約法』第48条に基づき、労働関係の回復或いは会社の賠償金支払(経済補償金の倍額)を求める権利があります。 |