企業は、妊娠・出産・授乳を理由に「三期」期間中の女性従業員の労働契約を解除することはできませんが、本人と協議一致に達した場合、或いは以下のように会社の規則制度への重大違反がある場合には、これを理由に労働契約を解除することは可能です。
「三期」中の女性従業員との労働契約解除事例
賈女士は、某社で出納を担当し、会社と3年間の労働契約を締結しており、従業員ハンドブック等の会 社規則制度も、労働契約の付則として確認・収受していた。2012年7月、賈女士は自身の妊娠がわかり、 休暇手続きを行った後に休暇を取得し、その後ずっと休み続けたが、それについては休暇申請手続きを行っていなかった。会社が賈女士に電話をするも連絡がとれず、書面にて同人に通知し、出勤を要求したが応じず、その後再度書面にて通知し、規定の期間内に休暇延長申請手続きを行うよう要求したが、期限が到来し無断欠勤として処理した。その後、会社は賈女士から何らの応答もない状況において、規則制度の中の“無断欠勤連続15日は重大な規則違反に当たる”ことを理由に、工会にも事前説明のうえ、書面にて同人に対し労働契約の解除を通知した。解除通知を受領して、賈女士は“自分は妊娠しており、会社は 労働契約を解除できない”ことを理由に労働争議仲裁委員会に訴えを起こした。
仲裁委員会は、審理の結果、会社が賈女士と労働契約を解除したことは法律規定に符合しており、賈女士の訴えは支持できないという判断を打ち出した。
弁護士解説
“三期”中の女性従業員は、法律の特殊保護を受けるとはいえ、同時に労働契約や会社規則制度の拘束も受けており、“三期”中の女性従業員でも、労働契約や会社規則制度の規定に違反し、労働契約を解除できる状況に達したならば、企業は労働契約を解除できるということです。今回のケースに限らず、会社が労働契約解除権を行使するにおいては、以下の3点が重要と言えます。
(1) 会社の規則制度中に具体的な労働契約解除基準が明記されていること
無断欠勤という会社規則制度への違反行為に対して、労働契約解除に相当する無断欠勤の回数についての法律法規の根拠はありませんが、同社規則中には「無断欠勤連続15日は重大な規則違反にあたる」という合理的且つ具体的な適用基準が規定されていたので、実際に遭遇した本ケースにおいても、スムーズな判断と運用が可能になりました。
(2) 会社規則制度の有効性
労働者の切実な利益に関する規則制度を制定または改定する場合、会社は、『労働契約法』第4条の規定に従い、労働者側の意見を聴取し、民主的に協議し、決定した規則制度を労働者側に告知または公示する必要があります。当社の会社規則制度も労働契約の付則として従業員に確認・収受されていたので、労働契約解除時の根拠としての有効性に疑義が生じ得なかったと言えます。
(3) 会社規則制度の合理的運用と客観証明
当社の則制度中に「無断欠勤連続15日は重大な規則違反にあたる」という規定があるとしても、会社が事態を放置したまま、15日経過後にいきなり対象従業員に労働契約解除を通知したとすれば、当該従業員からは、「事態を放置した会社側にも落ち度がある」との異議が出されたかもしれません。
これに対し当社は、事前通知による注意喚起を実施したうえで、対象従業員に対し手続き或いは補充手続きに必要な時間を与えたので、合理的に労働契約解除規定を運用したと言え、この点についても仲裁委員会の支持を得ることができたポイントのひとつと言えます。且つこれら通知を都度書面形式にて行ったことで、労働契約解除に至る過程を客観的に証明できる準備もできていた訳です。 会社側から労働契約を解除する場合の工会への事前説明義務(『労働契約法』第43条)をきちんと履行した点も重要です。 |