七十年代から中国の都市及び農村で推進されてきた計画出産政策は、中国の人口抑制や経済発展に重要な役割を果たしてきました。しかしながら、現在、中国の人口の動向は重大な変化が生じており、中国は全面的に二人っ子政策を実施して、計画出産のサービス・管理等を改革・整備することとしました。
2016年1月5日、『中共中央、国務院二人っ子政策を全面的に実施し、計画出産のサービス管理を改革・整備することに関する決定』(以下、『決定』という)が公布され、2016年1月1日より全国で二人っ子政策を実施することが決定されました。
二人っ子政策の全面実施
『決定』では、二人っ子政策をどのように実施するか明確にされています。摘要は次の通りです。
1、法に基づき二人っ子政策の全面実施を組織する。新たに改正した『中華人民共和国人口及び計画 出産法』を徹底実現し、関連の行政法規や地方性法規を整備する。
2、出産サービス管理制度を改革する。出産登記サービス制度を実施し、2人以内(2人を含む)の子供を出産する場合、審査批准は実施せず、家庭が自主的に出産を手配する。法律規則に基づき、政策外の複数の子供の出産を調査処分する。
3、出生人口のモニタリング・予測を強化する。
4、公共サービス資源を合理的に配置する。出産サービスの需要や人口の変動状況に基づき、婦女や幼児の保健、児童ケア、就学前及び中小学校教育、社会保障等の資源を合理的に配置し、公共サービスの新規増加の需要を満たす。社会の力が非営利性婦女児童病院、普惠託児所(訳注:高価な私立幼稚園に対して、大衆に向けた託児所)や幼稚園等のサービス機関を経営することを指導・奨励する。
二人っ子政策の主なポイント は次の通りです。
(1) 出産登記サービス制度を実施し、審査批准は実行しない
今後、二人以内の子供を出産する場合、審査批准は実行せず、家庭が自主的に出産を計画します。再婚等の特殊な状況で再び出産手続きを行う手順を改善し、オンライン手続きやワンストップサービス等を推進します。
(2) 政策対象外の複数の子供の出産には、依然として社会扶養費を徴収
『決定』では依然として、政策対象外の複数の子供の出産に対しては法律規定に基づき調査処分することを明確にしており、社会扶養費が徴収されます。
(3) 一人っ子費支給政策の調整
従前の一人っ子家庭や農村計画出産の女児2名家庭に対しては、引き続き既存の各種の奨励扶助政策を実行し、今後自らの意志で一人の子供のみ出産する家庭は、奨励扶助や優遇待遇の政策を享受できないことを定めています。
(4) 女性の就業・休暇等の合法的権益の保障
今後、女性が二人の子供を出産することが普遍的となっても、『決定』では、女性が出産後に元の職場職位に戻ることを支持し、雇用企業が従業員のワークライフバランスに配慮した措置を制定することを奨励し、社会の男女平等を促進することを明確にしています。
(5) 公共サービス資源の合理的な配置の加速
『決定』では、産科及び小児科の医師、助産士及び看護人材の育成を加速し、サービス価格を合理的に確定し、賃金報酬の分配等の面で政策の傾斜を強化することを明確にしています。
(6) 管理から家庭へのサービスの重視・増強に転換
家庭を重視し、出産サポート、幼児の養育、青少年の発展、老人介護、病人や障害者のケア等を含む家庭発展サポート政策が採り上げられています。
晩婚休暇を取消すか否か
当面は未確定であり、今後各地の立法機関が関連規定を改正するか否か注目されます。従前の規定では、晩婚年齢(女性満23歳、男性満25歳)に達した場合、各地方の『人口及び計画出産条例』に基づき、晩婚休暇10-30日を享受することができます(各地により異なる。3日間の法定結婚休暇を含み、北京・上海は晩婚休暇7日+法定結婚休暇3日で計10日など)。上海市では、晩婚晩育休暇が取り消されることが決まっています。
上海市:
新『上海市人口及び計画出産条例』は改正途上ながら、2015年12月30日の上海市人大常 委会では、2016年1月1日以降に結婚登記する公民は晩婚休暇待遇を受けることができないと明確にしています。2015年12月31日以前に既に結婚登記手続きをしているが、まだ晩婚休暇をとっていない公民は、晩婚休暇待遇を受けることができます。2016年1月1日以降に子女を出産する公民は晩育休暇待遇を受けることができませんが、規定に符合して出産する夫妻は、出産休暇延長の待遇を享受することができます。
既存の一人っ子家庭は、引き続き規定の条件・基準・年数に基づいて各種の奨励扶助・特別扶助・優先優遇政策を受けることができますが、2016年以降は自らの意志で一人の子女を持つ夫妻に『一人っ子父母光栄証』は発給されません。
既に『一人っ子父母光栄証』を取得して後、出産した場合、証書は回収され奨励は取り消されますが、それまでに受領した奨励費を返還する必要はありません。
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