中国の「工会」とは、日本語に敢えて訳せば「労働組合」となりますが、共産党組織部直轄の「中華全国総工会」を頂点とする共産党の下部組織である点、各省・市・区・街道毎に「総工会」があり、企 業における工会(=「基層工会」)はその末端組織として位置付けられる(企業内組織ではない)という点で、日本等における労働組合とは根本的に性格が異なります。
従って、従業員に不満が鬱積して自然発生的に工会が設立されるより、会社全体として経営層と一般従業員間の雰囲気が良い時に工会を設立することが望まれ、会社がある程度主導的に組織の設立に関与することは特に問題ありません。
具体的手順
① 企業所在地の一つ上の級の工会に対して、報告して設立の許可を得ます。
② 会社は社内で工会設立準備委員会を設置します。
③ 工会員が工会主席の候補者を民主的に推薦し、一つ上の級の工会へ報告して同意を得てから候補者と して指名するか、上級工会が推薦も出来ます。
④ 工会主席・工会副主席は会員大会或いは会員代表大会で直接選挙を行って決めるか、企業工会委員会 が選挙して決めることも出来ます。
⑤ 工会員が25名以上いる場合は、工会委員会を設立しなければならず、25名未満の場合も単独又は他社 と連合で工会委員会を設立することができます。
⑥ 工会委員会は会員大会または会員代表大会で差額選挙(立候補者数が定数を上回る選挙)により選出 されます。
⑦ 差額選挙を実施するために、工会委員会委員の候補者を募集(立候補)、推薦等により、指名します。 工会委員会のメンバーは通常、主席・副主席・会計責任者・婦女子委員・リクレーション委員などで 構成されます。
⑧ 上級工会に対して、選挙結果を報告し、設立の確認、選挙結果の認可および工会活動について指導を 受けます。
設立の注意点
(1) 工会を設立すると、毎月全従業員の給与総額の2%が工会経費として強制的に徴収されますので会社 の経費は増加します。そのうちの40%は上級工会に上納され、残りの60%は工会の口座へ還付されます。この40%の上納金が地区の総工会が各社に工会設立を要求する動機であり、労働争議発生時に仲裁に動いてくれることの所以でもあります。
(2) 外国籍正副総経理、従業員も組合に加入する権利があり、管理職・一般従業員と関係なく、工会員として選挙・被選挙(工会主席を除く)の権利を享受します。組合経費を計上する際、算出根拠となる 給与総額に外国籍従業員の給与は含まないという規定はありませんが、上部工会と上納額の計算には外国人従業員を除くことを交渉することは可能です。
(3) 会社は工会委員会と上級工会委員会の同意がなければ、工会主席• 副主席をその任期満了前に配置転換させたり、労働契約を終止したりすることができません。
(4) 工会会員が25人以下の場合は、工会委員会を設立しなくてもよく、1名の工会委員を設置し、工会活 動を行えるとしています。
(5) 25名以上の工会員を有する場合、工会委員会を設立しなければならない、ともされています。工会委員会の任期は毎期3年又は5年で、企業の経営管理部門の責任者、共同経営者及びそれらの近親者は、 当該企業の工会委員会の委員となることはできません。
(6) 企業の経営管理責任者、共同経営者及びそれらの近親者、企業の人事責任者、外国籍従業員は企業の工会主席になることができない旨規定されています。 |