中国の工会(労働組合)は、従業員の自由意志により設立することができる組織です(工会法2条)。
工会の基本的な責務は、従業員の合法的な権益の保護です(工会法6条)。それと同時に、工会が企業の経営管理活動を支持し(工会法38条)、従業員が積極的に企業から手配された作業任務を全うするよう従業員に働きかけることも、工会の重要な役割の1つです(工会法7条)。
このことから、中国の工会は日本のそれとは異なり、もっぱら企業側と対抗する組織というわけではなく、企業おける従業員の合法的な権益を保護するとともに、企業の合法的な権益も保護する存在、いわば企業と従業員の関係を調整し両者のコミュニケーションの橋渡しとなる役割を果たす組織であると位置づけることができます。
中国工会定款の総則は、効果について、「中国共産党の指導を受ける従業員が結成した組織であり、共産党が労働者とコミュニケーションをとる橋渡しである」と定めています(中国工会定款総則)。また、工会法9条では、工会が従業員の権益保護に関わる工会活動等を行うとき、上級工会(地方各級総工会、中華全国総工会)による指導を受けなければならないと定めています。中華全国総工会は、中国共産党中央書記の指導を受けるため(中華全国総工会のホームページより)、企業の工会も実質的には中国共産党の指導を受けることになります。
工会の実態
すでに中国の多くの企業(外商投資企業を含む)に工会が設立されています。しかし、ほとんどの工会が形骸化しており、機能していまいのが実状です。また、一部の工会では、従業員側の利益保護を優先し、従業員の権益を侵害した企業と対立するケースも多く見受けられます。企業側の利益の保護も考えて、従業員が集団的労働紛争活動を行い、サボタージュを行ったり、ストライキを行ったりする場合に、従業員側と折衝し、企業と従業員間の矛盾を調整し、生産の早期回復を図り、工会として機能を十分果たしているものは、まだほんのわずかにすぎません。 |