婚姻法には、協議離婚について「夫妻双方が自由意思により離婚を望む場合には、離婚を認める。双方は揃って自ら婚姻登記機関に出頭して離婚を申請しなければならない。婚姻登記機関は、双方が確かに自由意思に基づいていること、かつ、子及び財産問題に対して既に適切な処理を行っていることが調査により明らかなときには、離婚証を発給する」と規定されている。
協議離婚の処理機関は行政機関であり、その主管部門は民政部である。具体的処理機関は婚姻登記機関であって、内地居住者が自由意思で離婚を望む場合には、男女双方が揃ってどちらか一方の常住戸籍所在地の婚姻登記機関に出頭して離婚登記を行わなければならない。
中国公民と外国人、内地居住者と香港居住者・マカオ〔澳門〕居住者・台湾居住者・華僑とが自由意思で離婚を望む場合も、男女双方は揃って内地居住者の常住戸籍所在地の婚姻登記機関に出頭して離婚登記を行わなければならないことになっている。
協議離婚手続
1、申請
申請は口頭または書面で行うことができる。なお、申請に際しては、次の証明費類等を提出しなければならない。婚姻登記機関は当事者の提出した証明沓類等により、当事者の身分・夫妻関係や管轄などを確かめ、さらに夫妻双方の離婚紛争状況を知ることによって、離婚状況や離婚動機目的等々を全面的に把握するのに役立てる。
⓵ 本人の戸籍簿・居民身分証
ただし、香港居住者·マカオ居住者および台湾居住者は本人の有効な通行証·身分証を、また、華僑および外国人は本人の有効な旅券またはその他の有効な国際旅行許可証明証を提出しなければならない。
② 本人の結婚証
③ 当事者双方が共同で署名した離婚協議書
離婚協議書は当事者双方の真意によるものでなければならず、本人の署名または捺印を必要とする。協議内容は、離婚意思・子の扶養教育・夫妻共同財産の分割・債務弁済処理・生活困難な一方に対する経済的援助等であるが、これらの内容は妻と子の合法的権益保障に有利でなければならないとされている。
ちなみに、旧登記条例の下では、所属単位(職場、組織等)または村民委員会か居民委員会の紹介状も必須の提出書類となっており、これらの書類を入手するのは当事者にとって決して容易ではなかったそうした厳しい要件が必要とされなくなったので、その点だけでも現行の登記条例下において、協議離婚が行いやすくなったということができ、離婚増加原因の一つに数えられている。
2、審査
日本の戸籍事務管掌者と違い、中国の婚姻登記員は実質的審査権を有する。婚姻登記機関は、婚姻法および登記条例の規定等に基づいて、当事者からの離婚申諦を厳格に審査しなければならない。審査過程においては、まず当事者に対しては和睦調停と説得教育を行う。当事者双方に対し離婚問題を慎重に考慮し対処するよう教育し、婚姻がいまだ完全に破綻していないような場合には、その回復·和睦へ導くよう可能な限り尽力しなければならないことになっている。
双方の離婚同意があっても、子どもの扶養教育·夫妻財産問題等の処理が不十分な場合には、婚姻法の精神を遵守した十分な協議内容へと調整指導する。また、当事者が合法的夫妻関係にあるか否か、離婚意思は自発的真意によるか否か、詐欺脅迫や虚偽·仮装ではないかといった違法現象の有無も審査する。
婚姻登記機関が審査過程において、当事者の違法行為を発見した場合には、批判教育し、離婚登記は認めない。さらに、当事者の違法行為が刑法に触れる場合は、司法機関によって刑事責任が追及される。
3、登記
⓵ 離婚登記と離婚証の発給
婚姻登記機関は、離婚登記を行う当事者が提出した証明書·証明書類に対して審査を行い、かつ関連情況を尋問しなければならない。確かに自由意思で離婚を望むものであり、かつ子の扶養·財産·債務等の問題について一致した処理意見に達している当事者に対してはその場で登記を行い、離婚証を発給しなければならない。
② 離婚登記の不受理事由
なお、登記を行う際、次に掲げる事由の一つに該当する場合には、婚姻登記機関は離婚登記を受理しないとされている。
- 離婚協議に達していないとき
- 夫妻のいずれかが民事行為無能力者、または制限的民事行為能力者であるとき
- その結婚登記が中国内地で行われていなかったとき
③ 新登記条例による離婚証発給期間の短縮
新登記条例の下では、離婚証発給に要する期間が大幅に短縮され、当日でも可能となった。旧登記条例では、むしろ「当事者の離婚申譜後一か月以内に審査を終了しなければならない」と規定されていたように、 離婚証発給は必ずしも容易ではなかった。一か月の審査期限は塾慮期間ではないが、申請と登記の間に一定の期間を置くことにより、登記機関が丁寧な調停や審査を行うのに役立ち、かつ、詐欺や脅迫的離婚の救済·防止ともなり、また、当事者に反省の時間を与える(熟慮期間的役割)ことにもなるとされていた。
婚姻登記条例の今回の改正により、離婚が容易になり増加傾向を促進させているといわれる一原因とも言えることに同意する専門家は少なくない。 |