商業企業の分公司設立に当たって必要な手続きの流れは以下の通りです。
(1)分公司登記場所の賃貸借契約締結
分公司設立登記用の不動産物件を選定した後、総公司が物件家主との間で賃貸借契約書を締結しますが、分公司の設立登記時の提出書類としては、賃貸借契約書(原本)の他に、物件の「産権証」(不動産所有権証)も必要となるので、そのコピーを家主より入手する必要があります。
「産権証」のコピーを入手したら、賃貸借契約書の締結相手が物件所有者であるかどうか、また賃貸借契約書上の物件住所が「産権証」と一致しているかどうかを確認する必要があります。物件所有者が大手企業や外国人個人の場合には、物件管理や賃貸借契約書締結等の事務手続きを管理会社やその他の代理人に委託していることもよくあり、この場合には、賃貸借契約書の他に、物件所有者からの委託書が別途必要になります。
さらに、「産権証」上の物件用途の確認が非常に重要です。卸売り企業の分公司の場合には、グループ会社の工場の一角を間借りして分公司登記をする場合等の例外を除いて、「産権証」上の物件用途は「弁公」(「商業」等の店舗用途でも可)となっている必要があります。
一方、小売り企業の分公司(店舗)の場合、「産権証」上の物件用途が「商業」「店舗」等の店舗用途となっている物件以外での登記は認められませんが、同一ビル内に美容院や飲食店が入居している等、見た目は店舗であっても、登記上(「産権証」上)の用途は「弁公」となっていることも時々あるので契約時に注意が必要です。
(2)分公司名称の仮登記
分公司開設地の工商行政管理局にて分公司名称の仮登記手続きを行う必要があります。
総公司の名称仮登記手続き時には、希望する屋号と類似の名称が他社で既に登記済みである等、名称仮登記に大変苦労した経験をお持ちの方も多いと思いますが、分公司名称については、総公司の名称が既に登記されており、その後ろに○○分公司と付けるだけなので特に問題は生じません。
「○○」の部分は何でもいいですが、「長寧」、「浦東」等、分公司開設地の名称を入れたり、同一地域内で複数の分公司(店舗)を登記することもある小売り企業の場合には、「第一」、「第二」と開設順を名称に用いるケースが多いのです。
(3)分公司開設の認可回答書取得
後述(4)の通り、小売り業務に従事する分公司(店舗)の設立に当たっては、分公司開設地の省・直轄市級の商務部門の事前認可を取得する必要があります。
例えば、上海市内にて登記設立された小売り企業(総公司)が北京市朝陽区で小売り業務に従事する分公司(店舗)を開設する場合、小売り企業の総公司より朝陽区商務局に対し認可申請を提出し、その後、以下の過程を経て、朝陽区商務局より「認可回答書」(中国語:批復)が発行されます。
① 朝陽区商務局より上海市商務委員会に対し「伺い書」発行
② 上海市商務委員会より朝陽区商務局に対し「回答書」発行
③ 朝陽区商務局より小売り企業の総公司に対し「認可回答書」発行
尚、小売り企業の総公司所在地と同一の省・直轄市内で小売り業務に従事する分公司(店舗)を開設する場合には、その同一の省・直轄市級の商務部門、つまり、上海市であれば上海市商務委員会(北京市であれば北京市商務局)宛に認可申請を提出し、同委員会(局)より「認可回答書」を取得することになります。
(4)分公司設立登記~営業許可証取得
卸売り業務に従事する分公司は、分公司開設地の工商行政管理局にて直接登記手続きを行って設立(営業許可証を取得)することができます。
一方、小売り業務に従事する分公司(店舗)の場合、上述 (3)の通り、管轄の商務部門の事前認可を取得して初めて、分公司開設地の工商行政管理局での設立登記手続き(営業許可証の取得)が可能となります。
(5)営業許可証取得後の諸登記手続き
分公司の営業許可証を取得した後、分公司開設地の下記各関連当局にて登記手続きを行います。
① 組織コード証取得(質量技術監督局)
② 人民元基本口座開設認可証取得(中国人民銀行)
③ 人民元基本口座開設(取引銀行)
④ 税務登記(国税局、地税局)
⑤ 統計登記(統計局)
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