婚姻前財産の公証とは、結婚を予定する男女双方が各自の婚姻前の財産、債務の範囲と権利帰属問題について協議した内容の真実性·適法性を、公証機関「公証処」(注)によって法に基づいて、証明してもらうことをいう。
婚姻前財産公証
婚姻法には、婚姻前財産公証に関する規定はない。実際には、結婚を予定する男女や婚姻後の夫妻が、自らの意思で婚姻前財産公証をするか否かを決め、公証処に赴いて行っている。
1、婚姻財産公証の類型
- 未婚男女が婚姻登記前に協識をし、公証を求める場合
- 夫妻双方が婚姻関係存続期間中に協識をし、公証を求める場合
夫妻が婚姻後双方の所得財産の所有権帰属問題などを決める夫妻財産契約の公証も含まれる。
2、婚姻前財産公証に関する賛否両論
婚姻前財産公証の必要については、従来から賛否両論と見解が分かれる。夫妻であれば、財産を明確に分ける必要はなく、婚姻前に財産公証をするのは婚姻に自信がないことの表れであるとして婚姻前財産公証に反対する説もあれば、婚姻前公証は現代人が自らの将来の婚姻生活に対する高度な理性を具体化させるものであり、婚姻前財産公証が 金銭·財産を判断基準とする功利的な婚姻をある程度回避できるだけでなく、後日の婚姻財産紛争を解決する際の重要な法的根拠になると指摘して、婚姻前財産公証に賛同する説もある。
婚姻前財産公証の方法
婚姻前財産の公証方法については、次の四段階を経て行われる。
1、公証申請に必要な書類
当事者は次の書類を用意する。
- 個人の身分証明書
例えば、身分証や戸口簿(戸籍簿)。既婚者の場合は、結婚証明書も必要。
- 協議内容に関係する財産の所有権を証明するもの
例えば、家屋の所有証明書や、いまだ所有証明書を入手できていない場合は、家屋の売買契約書と代金支払領収証が必要となる。
- 双方が合意した協議書の下書き
協議書の内容は一般に次のようなものである。
a 当事者個人の基本的状況:氏名·性別·職業薬·住所など
b 財産の状況|財産の名称·数量·価格·状態·帰属
c
婚姻前財産の使用·維持·処分についての原則など
通常、双方当事者の署名欄および締結日欄を空白にして提出し、公証人がその協議内容について審査·訂正した後に、はじめて当事者双方は公証人の面前で署名する。
2、公証の申請
上記の書類を持参して、必ず当事者双方が揃って公証処に出頭し、公証申請を提出し、公証の申請書 類に記入しなければならない。代理人に依頼することは認められないし、また、当事者の一方のみで出頭して公証の申請をしても受理されない。
3、公証面接記録の作成
公証申請が担当の公証人に受理された後、公証人は財産協議の内容に基づいて、財産に関する権利証明について審査する。当事者の協議がなされた際に詐欺や誤った誘導がなかったかを、当事者本人に当たって確かめる。当事者は、公証人の質問には誠実に答えなければならない。公証人は当事者に対して財産協議締結後に負うべき法的義務と法的効果を知らせることにより、公証人に要求されている法的告知義務を履行する。当事者は、公証人による公証面接記録の作成に協力し、面接記録に署名し確認する。
4、婚姻前財産協議書への当事者双方の署名
当事者双方は、公証人の面前で婚姻前財産協議書に署名する。
婚姻前財産公証書の受領
当事者は婚姻前財産公証の手続が完了すると、一般に手続申請の二週間後に公証書を受け取ることができるとされている。
注:
「公証処」国家に代わって国家の公証証明権を行使する国家公証機関であり、国家司法機関である。公証処は、その公証活動を通して、公民が法律を遵守し社会主義法制を維持するよう教育しなければならないとされている。直轄市·県(自治県)·市、さらには省·自治区·直轄市の司法行政機関が許可した市区にも設置 され、司法行政機関の指導を受ける。
各公証処の間では、例えば市公証処·区公証処·県公証処間には上下等級関係はない。各自の所轄区範囲内で独立して公証の職権を行使し、各公証処の公証証明書は、同等の効力を有する。
公証処は、当事者の申請により、法律に基づいて、法律行為(契約·認知·遺言等)、法的意味を有する事実(出生·死亡·婚姻状況·親族関係·学歴等)、法的意味を有する文書(商標登録証·営業許可証等)の真 実性·合法性を証明し、これにより公民の身分上·財産上の権利と合法的利益を保護する。公証処の公証文書には特定の法律的効力があり、裁判では直接事実認定の根拠とされ、強制執行の効力が付与されている。また、法律行為成立の形式的要件としての効力を有する。
公証は一種の非訟活動であり、公証を通して紛争を防止し不法行為の発生を回避し、訴訟を減少させ、当事者間の利害の衝突を未然に防ぐため不可欠な予防法律制度とされている。
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