法定夫妻財産制
1、夫妻共同共有財産制
婚姻法は、夫妻財産契約を優先させることを明示し、婚姻当事者が夫妻財産契 約を締結していないか、その約定が不明確なとき、または、その契約締結が無効である場合に、はじめて法定財産制を適用することになっている。
法定財産制には夫妻共同財産制を採用し、夫妻個人の特有財産に該当する場合や夫妻双方が別に約定がある場合を除いては、夫妻の婚姻関係存続期間中に夫妻双方または一方が得た財産のすべてが夫妻の共同所有となる。
2、夫妻平等の持分·処理権
⓵ 夫妻平等の所有権
夫妻はその婚姻関係存続期間中に得た共同所有財産に対して、収入の有無·多少に関係なく、全く平等の持分・所有権をもつ。
② 夫妻平等の処分権
夫妻は共同所有の財産に対して占有·使用·収益でき、処分権も平等に享有する。
夫妻の共同所有財産に対する平等処理権に関しては、次のように解釈されている。
- 夫または妻が夫妻共同財産を処理するに当たって有する権利は平等である。日常生活の需要のために夫妻の共同財産を処理する場合には、いずれの一方にも等しく決定する権利がある。
- 夫または妻が日常生活の需要以外のために、夫妻共同財産に対する重要な処理決定をする場合には、夫妻双 方は平等に協識し、意見の一致を得なければならない。
一方が他方の意思に反して勝手に行った処分は、いかなる場合でも他方の合法的権益侵害となり、一般的にはその処分は無効である。
なお、他人が夫妻双方の共同意思表示と信ずるに足る理由がある場合には、夫妻の一方は不同意または不知を 理由として善意の第三者に対抗できないとされ、第三者の合法的保護が図られている。
損害を受けた配偶者に対しては、勝手に財産処分をした他方配偶者が弁償しなければならないとされる。
法定夫妻財産制に関する注意
1、婚姻関係存続期間中の取得財産に関する注意点
ある財産が夫妻双方または一方が婚姻関係存続期間内に「取得」されたものであるかどうかの認定について、次の四点からの注意が必要とされる。
⓵ 財産の取得時
- ここにいう「取得」とは、権利の取得をいい、例えば、所有権、相続権、特許権またはその他の権利である。これには、財産を実際に占有や支配する場合に限らない。例えば、夫または妻が婚姻後に相続や当選で取得した財産などについて言えば、離婚時に権利着が実際にはこれらの相続や当選で取得した財産を占有していない場合がある。しかし、相続財産は被相続人の死亡時、当選賞品は当選決定時に権利移転が発生するので、これらの財産を実際に支配、占有していなくても、婚姻関係存続期間に取得した財産として認定すべきである。
- ここにいう「取得」とは、権利の取得をいうが、異なる財産権の取得に関して、異なる財産権の移転に関する法規定に基づいて認定しなければならない場合がある。例えば、不動産権利の移転·贈与財産の移転車両所有権の移転·手形権利の移転については、いずれも異なる規定があり、それに従うとされている。
② 取得財産
- ここにいう「取得」には、夫一方のみの所得、妻一方のみの所得および夫妻の共同所得が含まれる。
- ここにいう「取得」には、婚姻法に規定される夫妻個人専有財産は含まれない。夫妻婚姻関係存続期間中に取得した個人専有財産であっても、婚姻法がこれらを個人財産として特別に規定した以上、これを夫妻共同財産として認定することはできない。
2、夫妻共同財産の処分権に関する注意事項
婚姻法は、「夫妻は共同所有財産に対して、平等な処理権を有する」と明確に規定するが、夫妻の一 方が無断で夫妻共同共有財産を処分することについての具体的法規定がない。そこで、当該規定を正確に理解·執行するためには、次の内容に注意を払わなければならないとされている。
⓵ 夫妻共同共有財産に対する平等権
- 財産における夫妻の共有は典型的な共同共有であり、分け前に応じた共有ではない。婚姻関係が成立した後から終了するまで、共有財産は一体となったものであり、夫妻双方は、職業·地位·収入の有無・多少によることなく、順位·分け前による区別もなく、共同財産に対しては平等に占有·使用·収益および処分する権利を有する。
② 日常生活需要に対する単独処理権
- 親族による共同生活という特徴から、「日常生活の需要」により夫妻共同財産を処理することがしばしば行わ れる。夫妻共同財産の処理における夫妻間の権利平等とは、大事から小事に至るまで、あらゆることに関して、夫妻間の相談を経なければならないことを意味するのではない。共同生活の需要から、夫妻のいずれも一方で共同財産を処分する決定権を有する。言い換えれば、一方が日常生活の需要に応じて単独で共同財産を処分したことを他方の権利に対する侵害とすることはできない。同時に、夫妻共同生活においては、明示または黙示の方法を通して、日常生活支出の管理権を一方に与えることは、夫妻共同生活中の至極当然のことであり、当然に法が 許容するところである。
③ 重要な財産に対する共同処分権
- 夫または妻が日常生活の需要以外でその共同財産に対して重要な処理決定を下す場合は、双方は平等に協議し、一致した意見に達しなければならない。生産·経営·投資·不動産または重要な動産の購入や処分などに当たっては、すべて双方の合意が必要である。夫妻のいずれの一方も無断で、他方の意思に反して重大な財産処分の行 為をする権利はない。さもなければ、他方の合法的な財産権を侵害することになる。
④ 善意の第三者保護
- 夫妻は共同財産に対して平等な権利を享有すると同時に、平等な義務を負担し、共同生活·生産·経営から生じた債務は夫妻の共同債務であり、共同財産をもつってそれを弁済しなければならない。正常な社会主義市場経済秩序を維持するために、一方が夫妻の名義をもって行った対外的民事行為を、第三者が夫妻双方の共同意思表示によるものであると信ずるに足る理由がある場合には、他方は「不同意」、「不知」を理由に善意の第三者に対抗することはできない。ただし、一方と第三者が悪意で結託して他方の合法的な財産権益に損害を与えようとした場合は、行為者と悪意の第三者はそれ相応の法的責任を負わなければならない。
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