夫妻の個人財産
旧「婚姻法」には夫妻の財産所有関係の規定がなかったが、現在の「婚姻法」においては関係条文を新設し、以下に列記する財産は、夫妻の一方の個人的財産(固有財産)とされるようになった。
1、婚姻前、夫妻の一方が個人的に所有していた財産
婚姻前、夫妻が各自で所有していた財産で、以下のようなものが含まれる。
- 労働所得などの合法的収入、家屋、貯蓄、個人経営者が生産経営に使用する設備・資金及び利益、前配偶者と離婚の際に受け取った分与財産等。
- 軍人の傷害死亡保険金・障害補助金・医薬生活補助費。
- 各自が結婚準備のために購入した財産。
2、一方が身体に傷害を受けたことにより取得した医療費や身障者生活補助費など
ただし、医療費取得前に夫妻共有財産から医療費を支出していた場合には、その医療費分は夫妻共有財産へ戻すべきとされる。
3、遺言または贈与の契約中に、夫または妻の一方のみに帰属すると定められた財産
なお、家屋に関しては次のような説明がなされている。
- 婚姻前、一方の父母が夫妻の住居入資金を提供した場合、その資金提供は自分の子である一方個人への贈与と認定すべきである。 ただし、父母が夫妻双方への贈与との明確な表示があったときは、 個人財産とはならない。
- 婚姻後に、一方の父母が夫妻の住居購入資金を提供した場合は、その資金提供は夫妻双方への贈与と認定すべきである。 ただし、父母が自分の子である一方個人への贈与との明確な表示をした時は個人所有となる。
4、一方が専用する生活用品。例えば、個人の衣類装飾品や身の回り品等
5、その他の一方に帰すべき財産
職業上必要な書籍.工具等の専用財産。ただし、生産のための設備用品は含まない。
一方が個人的に受領する医療費・保険費・賠償金や個人的に貢献して得た報奨金や記念的意味をもつ賞品等。
夫妻の共有財産
夫妻共有財産とは、夫妻が婚姻関係存続期間中(注)に得た、以下の財産のことである。
1、給料・賞与
基本的な給料のみでなく、折々に支給される奨励金・手当・時間外労働報酬等も含む。
2、生産,経営の収益
法が許可している範囲内の生産・経営活動によって取得する現物・金銭収入で、設計・技術・法律・医療関係業務はもちろん、講演・執筆・翻訳・撮影・家事手伝い等々の労務による取得収入である。
3、知的財產権の収益
知的財產権は科学・技術・文化等の領域内で創造された精神的成果・知的産物であり、科学著作・文学芸術・工業設計・実用新案・商標・科学的発明等、人間の頭脳的産物であり、聡明な才知の結晶であるときれる。
知的財産権の収益は、婚期関係存続期間内に、経済的な利益を実際に取得したか、または取得できることが明白である場合に限る。
知的財産権には、専利権(日本法上の特許権、実用新案権、意匠権を含む。)、商標権、著作権などが含まれ、権利者は譲渡または知的財産権の使用許諾をもって収益を得ることができる。
4、相続または贈与によって取得した財産
遺言または贈与契約により夫妻の一方にのみ帰属させると定められた場合を除く。
従来、相続または贈与によって取得した財産は、夫妻の共同財産とするのが一般的であり、旧婚姻法においてはそのように扱われていたが、現在の婚姻法において、被相続人または贈与者が夫妻の一方にのみ相続または贈与するとの明確な表示があった場合には、当該一方の個人所有とすべきであると修正された。
以前から批判が見られた問題点であり、こうした扱いは、元の財産所有者の意思を尊重することになり、個人の自由意思容認へ歩み寄ったものとみることができるとされる。
5、 その他共同所有に帰すべき財産
「その他共同所有に帰すべき財産」には、以下のものが含まれる。
- 一方が個人財産を投資して取得した収益。
- 夫妻双方が実際に取得、または取得すべきである住居補助金、住居公共積立金。
- 夫妻双方が実際に取得、または取得すべきである養老保険金、破産補償金〔破産安置補助費〕 (破産した企業の従業員に支払われる。)が含まれる。
- 結婚の際に親類·友人等から贈られた祝金。
- 婚姻前一方によって賃借したが、婚姻後に共有財産でそれを購入した家屋は、権利登記証書の名義人が一方となっていても、夫妻共有財産と認定すべきであるとされる。
- 軍人名義の退役費、自主職業選択費などの一時的な費用については、夫妻の婚姻関係存続年数に年平均值を掛けて得た金額を夫妻共同財産とする。ここでいう「年平均値」は、軍人名義で支払われる上述費用総額を具体的な年数で割って得た数字である。具体的な年数とは、平均寿命七〇歳と当該軍人が実際に入隊した際の年齢との間の差をいう。
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