中国の特に農村では家族が共同で労働に従事し、財産の共同所有·用益·取得·使用·処分することが少なくない。
離婚の際の財産分割や、一方が死亡した場合の相続財産の対象となる財産を明白にするためには、夫妻の個人財産·夫妻共有財産、さらには夫妻以外の家族財産の区分が必要になる。
1、夫妻の個人財産認定時の注意点
夫妻の個人財産と認定するに当たって注意しなければならない問題点がある。
⓵ 婚姻前の個人財産(原状保持)
夫妻の一方が有した婚姻前の個人財産を、婚姻関係存続期間中もそのまま夫妻の婚姻生活に使用していたが、当該財産は殿損·消耗·滅失しておらず、原状を保持していれば、当該財産は依然として夫妻の一方の個人財産である。
② 「転化共有財産」の否定
実は、現在の「婚姻法」以前の扱いにおいては、「転化共有財産」として、夫妻の一方の個人財産が一定の条件の下で夫妻の共有財産に転化することが認められていた。
例えば、婚姻前に一方が所有していた家屋その他の比較的価値の高い生産資料は、婚姻後夫妻双方が共同で使用·経営·管理して八年以上経過するか、または、貴重な生活資料は四年経過後に、夫妻の共同財産とされて離婚時には財産分割の対象となった。この扱いは、実質上経済的弱者である妻の利益保護と公平の実現に役立つものであった。しかし、現在の婚姻法には関係規定を設けず、その後に出た最高人民法院の司法解釈により、「転化共有財産」の扱いを否定する明文規定を設けた。したがって「転化共有財産」を認めた最高人民法院の司法解釈の該当規定は失効した。その結果新婚姻法以前の離婚においては財産分割の対象(財産分与)として認められるが、新婚姻法後の離婚においては財産分割の対象とならず、離婚時の財産分割対象財産に違いがある点に注意を要する。
③ 婚姻前個人財產の補償.弁徴
夫妻の一方の婚姻前の個人財産を婚姻生活の用に供したが、それが既に完全に消耗したか、または段損·滅失に至った場合、その個人財産所有当事者は、夫妻共同財産によるその補償または弁償を主張することはできない。
2、家庭財産 (家族財産)
家庭財産とは、家庭成員が共同で所有する財産をいう。これは、夫妻の共同財産も含まれれば、親子・祖父母・孫・兄弟姉妹の財産も含まれる。
一般的に家庭財産には主として次のものが含まれ、個人財産か家庭財産か不明のものは家庭財産とみなされる。
⓵ 家庭財産の種類
- a 夫妻双方が婚姻前から所有する財産
- b 夫妻が婚姻関係存続期間中に取得した財産:これには、双方または一方の労働によって得られた財産、双方または一方が取得した財産または受贈した財産が含まれる。
- c 子の財産:子が自らの労働により取得した財産、子が遺贈や相続など合法的方法で得た財産、父母などからの扶養費も子が受領した後は子の個人財産としている。
- d 父母・祖父母および兄弟姉妹の財産
a、c、dは離婚に際して財産分割の対象とはならない。家族財産の中から a、c、dを除いた夫妻財産のみが、離婚の際の財産分割の対象となる財産である。
② 夫妻の土地請負権
中国農村部では家庭を単位とする土地請負制度が広く実施されている。土地の所有権と経営権が分離され、国家または集団は土地の所有権を有するが、各家庭による請負経営は独立した財産権としての土地請負経営権、管理権および収穫権を有している。
土地請負経営権などは家庭成員の共有財産であり、夫妻は土地請負経営権に対し平等の権利を有する。「中華人民共和国婦女権益保障法」(以下「女性保障法」 と略称。)には、「婚姻·家庭共有財産関係において、女性が法により享有する権益を侵害してはならない」、また、「女性は法律の規定に従って夫妻共同の財産に対してその配偶者と平等な占有·使用·収益と処分の権利を享有し、双方の収入状況の影響を受けない」との保障規定が設けられている。
新婚姻法は、夫妻が離婚する際「夫又は妻が家族の土地請負経営において享有する権益等は、法に基づいて保護を与えられなければならない」との関係保護規定を追加している。
その場合に関する最高人民法院の司法解釈によれば、 「請負側の夫妻が請負契約履行期間中に婚姻関係を解消したが、請負経営の権利·義務については協議が成立せず、かつ、双方に請負経営の主体としての資格がある場合、人民法院がその離婚案件を処理する際には、家庭構成、高齢者·未成年子の扶養などの具体的な状況に基づいて、請負経営権を分割する」とされている。
注:
婚姻関係存続期間とは、⓵結婚証を取得して合法的な婚姻が成立した時から、配偶者の一方が死亡または離婚が成立した時までと、②婚姻未登記であるが夫妻名義の同居で、事実婚と認定された場合はその同居開始日から同居解消までを指す。
夫妻の別居または離婚一審判決未確定や上訴中の期間は、依然として婚姻関係存続期間である。婚姻前の恋愛·婚約期間や同棲期間は、婚姻関係存続期間には入らない。なお、以下の二つの期間はいずれも夫妻関係存続期間に該当せず、その間に取得した財産は夫妻共同財産として認定することができない。⓵共同生活をするものの、双方間に婚姻の実質的要件が備わらず、結婚証明証を受け取っていなかった期間。②離婚登記がなされ、または訴訟離婚の効力が発生した後に、双方が同居生活をしていた期間。
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