元の婚姻法は、夫妻間で法定財産制とは異なる内容の財産契約を結ぶことを容認する文言を規定したものの、夫妻財産契約の要件に関する具体的規定は全く設けていなかった。その後、市場経済の推進に伴い従来とは比べものにならない程夫妻の財産は多様·複雑·多額化し、また一般の人々、とりわけ、若い世代における財産権の保護意識が高まってきて、夫妻財産制度の新設が国民に受け入れられるようになった。
そうした状況下で今の婚姻法は、元よりも夫妻財産制に関する規定を具体化させ、法定夫妻財産制において夫妻共同財産制を保留するとともに、夫妻特有財産規定も新設した。また、夫妻契約財産制に関する規定をより具体的、かつ明確にした。
夫妻財産契約優先の原則
夫妻財産契約の締結は、婚姻当事者に夫妻財産関係上、自治的意思を認めることであるとされている。一見、法定財産制を主として、契約財産制を従とする制度であるかのように見られるが、婚姻当事者間に財産に関する契約が締結されていないとき、契約が不明確のとき、または契約が無効のときは、法定夫妻財産制が適用されると規定し、夫妻財産契約の法的効力を法定夫妻財産制に優先させている。婚姻当事者に夫妻財産制の自由選択の権利を認め、契約財産制の締結があれば、法定財産制は適用されなくなるものとしている。
夫妻財産契約締結の当事者適格
1、合法的夫妻関係者であること
当事者双方は、合法的な夫妻の身分関係を有すること。婚姻外同居者の財産関係契約は夫妻財産契約に属するものではない。
2、夫妻双方体民事行為能力者であること
当事者双方は、完全な民事行為能力を有していなければならない。夫妻の一方が制限的行為能力者である場合は、当夫妻には法定財産制が適用されるほかない。
ただし、夫妻財産契約締結後に、夫妻の一方が行為能力を喪失しても影響は受けない。
3、夫妻双方の自由意思による締結
- 夫妻財産契約の締結は、双方の自由意思によるものでなければならない。詐欺·強迫手段により、または相手方の真実意思に反する状況下で締結された契約に対しては、変更·取消しを請求できる。
- また、代理によって行うことはできない。したがって、夫妻財産契約が締結されないうちに、夫妻の一方が完全行為能力者でなくなった場合には、当夫妻には法定財産制が適用され、婚姻後の取得財産は共有となるのみである。
4、契約内容の合法性
- 契約内容は合法的でなければならない。国家·集団·他人の利益に損害を及ぼすことに当契約を悪用することや社会の公共利益に違反することは許されない。
- 契約内容は夫妻財産の範囲を超え、他の家族の財産に及んだり、第三者に対する債務やその他の法的義務を逃 れるために利用することはできない。
夫妻財産契約の締結時期と方式
婚姻法は、夫妻財産契約の締結時期について制限を設けていない。
夫妻は婚姻前、婚姻登記の際、さらには婚姻後の何時でも締結できると解される。
婚姻法は、夫妻財産契約の締結方式を書面によらなければならないと規定しているが、どのような書面形式が必要とされるかについての規定がない。例えば、公証方式か、登記方式か、あるいはその他いずれの方式であれ、普面形式であればよいのか等、明白ではないため、今後に残された課題の一つとなっている。
なお、当事者が口頭形式で契約し、契約後その内容について相互間に争いがない場合は有効であるとされている。
夫妻財産契約の内容
婚姻法は、当事者夫妻が締結できる夫妻財産契約の内容を制限し、次の三種と規定している。
1、一般共同制(共有制)
夫妻双方の婚姻前財産と婚姻後取得財産の全部を、夫妻双方の共同共有財産とする (ただし、特有財産を除外する。)制度である。
2、限定共同制(一部別産制・一部共有制)
ある財産を夫妻共有財産と明確に規定し、残余の財産を夫妻の一方の個人所有財産とするか、またはある財産を各自の個人所有財産と明確に規定し、残余の財産を夫妻の共有財産とする制度であり、一部共同所有制とか一部個人所有制と俗称される制度である。
3、分別財産制(別産制)
婚姻前の財産と婚姻後取得した財産の全部を各自の所有とする制度であり、夫妻で共有する財産を設けない制度である。
夫妻財産契約の効力
夫妻財産契約の効力は、対内的(夫斐間)と対外的(対第三者)効力の双方を包含する。
1、対内的効力(夫婆間の効力)
婚姻内部においては、夫妻双方に対し法的拘束力を有し、夫斐は契約内容を遵守しなければならない。契約内容の変更·取消しは、双方の同意を経ることを必要とする。双方の協議が成立しない場合には、変更· 取消しを要求する一方は人民法院に提訴して、裁決を得ることができる。
2、対外的効力(第三者に対する効力)
対外的効力については、夫妻が別産制の契約を締結した場合についてのみ規定を設けている。
婚姻期間中の取得財産について、各自所有とする夫妻財産契約を締結した場合に、夫妻の一方が対外的に負った債務は、第三者が当夫妻の財産契約を知っていた場合にのみ、一方当事者本人の所有する財産のみをもって弁済すると規定し、善意の第三者にとっては夫妻に対する共同責任の追及が可能となり、夫妻財産共有制の法定財産制に基づく償務弁済方法が適用されることになる。
なお、「第三者が当夫妻の財産契約を知っていた」との挙証貴任は夫妻の一方が負わなければならないとされ、第三者には善意であることの証明を必要としない。
婚姻法の新設規定は必ずしも明白·詳細な規定とは言えず、なおも法解釈の必要性·補足が少なからず残されている。ちなみに、司法解釈では離婚に 関する場合も含めて夫妻財産関係規定を追加規定している。 |