離婚後の住宅問題は、司法処理に困難な紛争解決問題の一つです。
第一に、家屋の所有形態が複維で、また、都市の大部分に、家屋の所有権は国家または集団に属していました。第二に、中国に大都市では随分と住宅建築が進んではいますが、まだまだ住宅不足は解決していなく、そのため離婚当事者双方は往々にして互いに譲歩せず、紛争が避け難い状況にあります。
住居問題は当事者双方にとって切実であるのみならず、その他の家族成員にとっても、はたまた財産問題としても重要性をもっています。
特に、中国では長期にわたって多くの職場が男性のみに住宅を支給し、女性には支給しない政策を執ってきたため、夫が支給された家屋に居住していた妻は、離婚によって住む場所を失う窮地にさらされます。したがって、その適切·妥当な解決が離婚自由の保障、女性·子どもの合法的権益保護のためにも要求され、次のような原則を挙げています。
- 女性·子どもの合法的権益の保障
- 家屋財産権の保護
- 子どもや障害者を扶養する者、または生活困難な他方への配慮·優先
- 調停と協議一致を堅持する原則
- 無責配偶者への配慮
私的所有の住居に対する処理
《女性保障法》に規定する離婚時女性の家屋権保護の原則、関連する最高人民法院の《司法解釈》および審判実務の経験により、以下のように処理すべきとされています。
1、双方が夫妻共同財産中の家屋価值およびその帰属について協議を達成できない場合
人民法院は以下のように処理しなければなりません。
①双方が家屋所有権を争い、価格競争による取得に同意する場合は、これを認めなければなりません。
②一方が家屋所有権を主張する場合は、価格評価機関が市場価格に基づいて家屋に価格評価を行ってもらい、家屋所有権を取得した一方は他方に相当な補償を与えなければなりません。
③双方いずれも家屋所有権を主張しない場合は、当事者の申立てに従い家屋を競売し、取得代価を分割します。
2、離婚時、双方がいまだ所有権を取得していないかまたは完全に所有権を取得するに至っていない家屋の所有権に対して争いがあり、協識が成立していない場合
人民法院は家屋所有権の帰属について判決すベきではなく、実際の状況に基づいて当事者の使用関係につき判決しなければなりません。家屋所有権の帰属と分割ではなく、居住·使用のみについて判決します。
当事者が同家屋の完全な所有権を取得した後に、紛争が生じた場合には、改めて別件として人民法院に訴訟を提起することができることになっています。
3、夫妻共有による私的所有家屋の処理
①夫妻共同で購入したり、共同で建築した家屋は、分割可能なものは、原則として均等に分割します。
②分割不能または分割不適なものは、双方の住宅状況および子どもの養育または無責配偶者への配慮の原則に基づき、一方の所有とします。所有者となった一方は、他方に対して当該家屋の価格の半分を補償しなければなりません。双方の条件が等しい状況下では、妻に配慮すべきであるとされます。
③婚姻前に一方が賃借し、婚姻後に双方が共同財産で購入した家屋は、家屋の権利所属が一方の名義下にある場合であっても、夫妻の共同財産と認定しなければなりません。
④当事者(夫妻)の婚姻前、その当事者の一方の父母が双方の家屋購入に出資した場合、当該出資者の子個人ヘの贈与として認めなければなりません。ただし、父母が双方への贈与と明言した場合はこの限りではありません。
また、当事者の婚姻後、その当事者の一方の父母が双方の家屋購入に出資した場合は、当該出資を当事者双方への贈与として認めなければなりません。ただし、父母が一方への贈与と明言した場合はこの限りではないとされています。
4、夫妻の一方所有の私的所有家屋の処理
①一方が婚姻前所有していた家屋、または、婚姻後の約定で一方の所有家屋としているものは、離婚時その家屋所有者に帰属します。ただし、他方が離婚後に住居がなく、または住居を捜すことが困難な状況にあり、暫定的な同居を要求する場合には、実情を調査してその状況を斟酌し認めることができますが、一般にはその期限は二年を超えることはできません。
家屋をもたない他方が賃借するのに、経済上の困難があることが確か場合には、家屋を有する一方は一時性の経済援助をすべきです。
②婚姻後八年以内に一方が婚姻前所有していた家屋を夫妻が双方で修理·内装·解体し元のままに建築し直しましたが、離婚時にその財産権〔産権〕が変更されていない場合は、家屋はその財産権〔産権〕者の所有に帰属します。家屋の価值が上昇し、その上昇部分に他方が得るベき分け前が含まれる場合は、家屋所有者は他方に対して当該価格補償をしなければなりません。家屋を増築した場合には、家屋の增築部分を夫妻共同財産として処理しなければなりません。
5、夫婦が共同出資して取得した部分産権(注)の家屋の処理
①この部分産権は夫妻共同財産に属しますが、部分産権は分割することができません。夫妻のどちらか一方のみが、その権利を取得することができるにすぎません。そこで、離婚時にその部分産権を得た一方は、一般的にその取得家屋の財産権に比例して、離婚時の当地政府の関係部門が公布した同類住居の標準価格に照らして、その部分産権の価格の半分を相手に補償すべきです。
②夫妻双方が共に部分産権の家屋を欲して紛争となった場合は、双方の同意があり、かつ双方の経済的、住宅的条件が同等である場合には、価格競争の方式を採用し、いずれか部分産権について高額を申し出た方がその部分産権を取得し、他方には高額価格の半分を支払う方法が採られるようです。この方法は部分産権を取得できなかった他方にとっても公的標準価格より多額の金銭を入手することになり、双方にとって公平であるとの見解が見られます。
公的住居(公舎·社宅など)に対する処理
夫妻の共同住居が公的住居の場合には、事情は一層複雑です。離婚後の家屋処理問題について注意すべき点として次のように說明されています。
1、以下のような事情の下では、離婚後も双方が等しく借用できます。
①婚姻前に一方が賃借したものでも、婚姻関係が五年以上継続している場合。
②婚姻前に一方が賃借した職場〔単位〕の家屋であるが、離婚時には双方が当職場の従業員である場合。
③一方が婚姻前に貸付金によりその賃借権を得たものであるが、婚姻後に夫妻が共同でその貸付金を返済した場合。
④婚姻後一方または双方が申請して賃借権を取得した場合。
⑤婚姻前一方が賃借した住居であるが、婚姻後にその賃借権を処分して他の家屋の賃借権を取得した場合。
⑥夫妻双方の職場が連合で投資建築または購入した共有の家屋の場合。
⑦一方が借用していた職場の公舎を他方の職場の公舎と交換し、さらに他方の職場が別の家屋へと調整を交換した場合。
⑧婚姻前に双方が借用していた公舎を、婚姻後合併して他の公舎へと交換した場合。
⑨その他、夫妻双方が等しく借用権を有すると認定すベき状況の場合。
2、離婚後も夫妻双方が等しく公舎の借用権を有する場合に、その公舎の面積が広く、部屋を分けて各々居住できるならば、そのようにすベきです。
3、離婚後も夫妻双方が等しく借用権を有しますが、離婚後、一方のみが借用する場合には、他方に対して適当な経済的補償を行います。
4、借用権をもたない一方が、離婚後、住宅確保困難のために暫時的に他方と同居させてもらう場合は、一般に二年を超えてはならず、その間は使用費やその他の必要経費を支払わなければなりません。
5、借用権をもたない一方が、確かに経済上住宅困難であるときに、借用権をもつ他方が負担能力をもつ場合には、一方に対して一時性の経済的援助をすべきです。
注:部分産権とは、財産に対する占有·使用·収益·処分の四つの具体的権利のうちの一部の権利を、有償または無償で他人から譲渡されることができるものです。例えば、家屋の占有権と使用権を購入した者は、この家屋の占有と使用ができる部分産権を有する者となります。 |