人民法院は夫妻共同財産の分割問題処理に当たっては、《婚姻法》、《司法解釈》のほか、《女性保障法》の関係規定にも基づかなければなりませんが、個人財産、夫妻共同財産および家族共同財産(夫妻以外の家族との共同財産)の区別を明白にした上で、次の原則を堅持すべきであるとしています。
男女平等の原則
夫妻財産の分割とは、夫妻共同財産の分割です。法定夫妻財産制では婚姻関係存続期間中、夫妻はその共同財産に対し平等の所有権と処理権をもっていますが、離婚時の夫妻共同財産分割に対しても、夫妻双方は平等の地位·権利をもつものとしなければなりません。
女性·子どもの合法的権益保護の原則
夫妻共同財産分割に際しても、当該原則規定により女性と子どもの合法的権益を侵害してはならないことになります。男女平等の原則の堅持は、決して夫妻共同財産の平均的分割を意味しません。現今においても、総体的にはまだ女性の経済的能力には男性に比べて格差があります。夫妻共同財産の分割時には、女性の具体的状況に基づき一定の配慮を加え、経済的問題のために女性の離婚自由の権利行使が影響されないようにすベきです。同時に、子どもの生活に必要な扶養に対する配慮をも行わなければならないとされています。
無責配偶者への配慮の原則
離婚紛争が明らかに一方配偶者の有責的行為によって発生している場合には、婚姻期間中他方が被った精神的打撃や身体的傷害に対する慰籍として、共同財産分割に際し経済上の配慮を行うベきで、例えば、財産の実際状況に基づき多額な分割を認めますとか、具体的な財物の分割に優先的選択権を認める配慮をすベきであるとします。
《婚姻法》には、離婚における損害賠償制度の規定はなかったのですが、それを認め有責者に適当な懲罰を科すことは、夫妻に婚姻家庭における義務を真剣に履行させるためにも有利であるとされました。離婚過程は非常に複雜で、有責の大小を法廷において把握することは容易ではないですが、有責配偶者に損害賠償責任を認めることを基本原則の一つとして、既に立法化すべき考慮がなされているとされました。
《婚姻法》では、「重婚」、「他人(異性)との同棲」、「家庭内暴力」、「家庭成員への虐待·遺棄」が原因となって離婚した場合には、無責配偶者に損害賠償請求権を認める条文を新設しました。
当事者の意思尊重の原則
夫妻共同財産の分割時に当事者の意思を尊重することは、公民の権利を尊重することです。一方配偶者が夫妻共同財産の全部または一部を放棄することを望む場合には、国家·集団·社会および他人の合法的権益に損害を加えない限りは、認めるベきであるとされています。
当事者の生産と生活に有利·便宜的であることを保障する原則
夫妻共同財産分割に当たっては、夫妻の生産と生活の需要に有利であることから出発し、財産的効用と経済的価値を損なわないよう注意すべきとします。夫妻共同財産中の生産資料は、経営条件と能力をもった一方に与えるベきで、生産资料を与えられた一方は他方に対して、その財産的価値の半分に相当する価格を補償すベきです。夫妻共同経営の年に無収益である養殖や植林等の事業においては、離婚時の生産発展·経営管理に有利な方法を考慮して合理的な分割または価額折半で処理すベきです。一方が夫妻共同財産により他人と共同経営を行っている場合はその財産は当該一方の所有としますが、他方に対してその財産の半分に相当する価額を補償させます。生活資料の分割については、夫妻双方の実際の需要と能力を十分に考慮して、それに見合った合理的な配慮を行うベきとします。
国家·集団·他人の利益を侵害しない原則
離婚時に、国家·集団·他人に所属する財産を、夫妻共同財産に加えて分割することはできません。夫妻共同財産の分割にかこつけて、他人の利益を侵害することも許されません。当事者が汚職や窃盗等違法的に取得した財産は、法に基づいて没収しなければならないとされています。
離婚の際に分割される財産は、夫妻共同財産に限られ、個人財産や家族共同財産(夫妻以外の家族との共同財産)は分割の対象とはなりません。個人財産、夫妻共同財産と家族共同財産の区別については別の文章を参照。個人財産か夫妻共同財産か確定し難い財産に対しては、その権利を主張する一方に挙証責任があります。当事者が有力な証拠を提起できず、人民法院も調査できない場合は、夫妻共同財産として処理します。
婚姻前に相続が開始し、婚姻後にその遺産を相続した場合の相続財産の帰属夫妻の一方の婚姻前の財産は、夫妻の一方の財産とされます。
夫妻が婚姻関係存続期間中に得た相続財産は、遺言または贈与契約中に夫または妻の一方にのみ帰属すると定められている場合を除いては、夫妻の共同所有に帰するとされています。そこで、婚姻前に相続が開始しましたが、婚姻後にその遺産を相続した場合の相続財産の所有が問題となります。相続は被相続人の死亡時より開始します。相続開始が婚姻前、相続配偶者は婚姻前に当該遺産の相続権を取得している場合は、実際上婚姻後に相続財産を取得しても、相続財産は婚姻前の財産に該当し相続配偶者の個人財産とされます。 |