外商投資企業における未処分益を再投資して自社に増資したり、別会社設立の為の資本金に充てることは可能です。これらの場合の投資主体は外商投資企業の現出資者(外国企業)となります。また、外商投資企業自身が出資者となって中国国内に別会社を設立する場合、内資企業としての出資になります。
再投資に用いることができる利益の範囲
外商投資企業が獲得した利益に対する企業所得税を納付し、利益準備金を積み立てた後の利益剰余金 (未処分利益)については、これを再投資に用いることができます。具体的な実施順序は次のとおりです。
(1) 当年度に実現した利益総額から過年度の損失を補填(税法上認可されるのは5年間の損失補填)し た後の利益に対して企業所得税を計算、納付します。
(2) 企業所得税を納付した後の純利益は、年初の未処分利益(会計諸表上の未処分利益の年初数)と合算し、当該数値がマイナスの場合は後続の配当ができません。当該数値がプラスの場合は、後述する利益準備金を積み立てた後の利益剰余金を原資として配当に充当することができます。つまり、再投資に用いることができる利益とは配当可能利益と同義であり、この場合の投資主体は外商投資企業の現出資者(外国企業)となり、設立される会社は外商投資企業となります。
(3) 尚、外商投資企業における利益準備金の積み立て比率は税引き後利益の10%を下回ってはならず、累計積立額が登録資本金額の50%に達する時点まで積立を継続しなければなりません。その他の積立(企業発展基金及び従業員福利奨励基金)については、2006年1月1日の改正『会社法』施行後は積み立てないことも可能となりました。
(4) 利益準備金の累計積立額が登録資本金額の50%に達していない状態でも、利益準備金を積み立てた 後の未処分利益の範囲であれば再投資に用いることができます。但し、未処分利益という出資者権益を用いての再投資であり、外商投資企業の董事会が利益処分(出資者への配当)を決議した後、出資者が配当を受けてそれを再投資する(但し、出資者への配当送金は行われない)格好になる為、当然ながら出資者は配当所得を計上のうえ、然るべき税金(後述)を支払うことが必要になります。
(5) また、現金配当であれ、利益再投資であれ、税務局の検査が終了して、税務局より「完税証明」を取得した後に実施することができますので、一般的に董事会での利益処分(配当)決議が3月としても、再投資を実施できるのは7月頃になります。
(6) 加えて、未処分利益を再投資して自社への増資に用いる場合には、出資者権益勘定内での未処分利益から資本金への会計科目の移動となりますが、本件のように、これを出資金として別会社を設立する場合には、当社からの資金流出が生じますので、これにより自社の資金繰りに支障が出ないかどうかについても良く検討する必要があります。 |