婚約の問題
婚約とは、男女双方が将来の結婚を目的とした事前的な約束をいい、庶民間の習俗として行われてきたものですが、婚約に関する法規定は中国婚姻法に設けられていません。
「婚姻法」は、「結婚しょうとする男女双方は、自ら婚姻登記機関に出頭して結婚登記を行わなければならない」と規定し、男女双方が婚姻登記機関で婚姻登記を行った場合に限り結婚と認められ、法的に承認されて保護を受けられることを明記しています。
他方、婚約は結婚に必要な法的手続ではないため、法的効力を有するものではなく法的保護を受けられません。男女双方が自らの意思によって行った婚約について、法はこれを禁止しませんが法的保護も与えないとされています。
婚約破棄による紛争問題
1、身分の紛争
婚約上の身分的権利について、人民法院または関係機関はこの種の紛争の調停も訴訟も受理しません。当事者の一方が婚約を破棄したいときは、相手の承諾やいかなる法的手続も経る必要はなく、相手に知らせるだけで破棄できます。
2、財産的紛争
婚約破棄に伴う財産的紛争は、中国民法における財産権の関係規定等に基づいて、分類し処理します。財産的紛争に基づく提訴については、人民法院は受理しなければならないとされています。
① 婚約と言って実際には売買婚によって取得した財産は、原則として没収され国庫に帰属します。当該行為については、情状に応じて処理します。
② 婚約といって財産を騙し取った場合は、不法に取得した財産を除いてすべて被害者に返還します。刑法に触れる場合は、必ず刑事責任を負わせます。
③ 恋愛と偽って、財産を送ることを手段として異性をもって遊んだ場合は、その者が相手に贈った財産は、贈与物と見なして返還を命じません。
④ 当事者間の自主的婚約締結後に一方が他方に贈って物は、原則的には返還しなくていいです。しかし、非常に高価な物や贈与者にとって貴重品であったり、結婚目的で条件的に贈与した場合などには、贈与者の返還請求により、まず当事者間の協議に委ねますが、協議が成り立たない場合には事情を斟酌して返還させます。
⑤ 婚約式を派手に行うなど、婚約に多額の経費を使い、一方に経済的損失が発生した場合でも、通常は出費者自らが経済的責任を負い、相手に損害賠償を求めることはできないとされます。
以上のような扱いは、婚約破棄を理由とする損害賠償請求訴訟は認められないと解されています。 |