中国は、夫妻の共同債務について、「離婚の際、夫妻の共同生活のために生じた債務は、共同で弁済しなければなりません。共同財産が完済するのに不足する場合、又は、財産が各自の所有に帰属する場合は、夫妻双方の協議により完済します。協議が成立しないときは、人民法院の判決によります」と規定します。
夫妻の共同債務
夫妻の共同债務とは、婚姻関係存続期間中に、夫妻の一方または双方が共同生活を維持するために、または、共同生活の維持目的を達成するために従事した経営活動から生じた債務をいいます。夫妻の共同债務を認定するに当たっては、次の三点からの把握を要します。
1、夫妻関係存続期間中に生じた债務
夫妻関係存続期間とは、夫妻双方が婚姻登記を行った日から婚姻関係が終了する日までの期間をいいます。これには、婚姻後夫妻双方が共同生活する期間のみでなく、婚姻登記後夫妻が同居するまでの別居期間、さらには、一方が人民法院に離婚提訴後、離婚を認容する旨の調停調書または人民法院の判決が効力を発生させるまでの期間をも含みます。
2、生活債務だけでなく、経営债務をも含む
「生活债務」とは、夫妻関係存続期間中に、夫妻双方または一方が共同生活を維持することから生じた債務をいいます。婚姻家族の共同生活に必要な一切の費用、例えば、子ども·高齡者の扶養费·医療費をはじめ、家屋の建築·家財道具の購入などに関して発生した债務が含まれます。夫妻双方が別居した場合でも、労働力または経済的収入に欠ける一方水その別居期問中に個人生活を維持するために生じた債務は、その者が独自で負った債務とはいえ、これも夫妻共同の生活债務として認定し処理しなければならないとされます。
「経営偾務」とは、夫妻関係存続期間中に、夫妻の一方または双方が共同生活の維持目的を達成するために従事した経営活動から生じた债務をいいます。
中国は、「夫妻関係の存続期間中、一方が個人経営又は請負経営に携わる場合には、その収入は夫妻の共有財産となり、償務もまた夫妻の共有財産をもって弁済しなければならない」と規定します。当規定により経営债務扱いの明確な法的認定根拠が与えられましたが、裁判実務上実際には、双方または一方が個人経営·請負経営に携わる場合の離婚案件において、経営期間内の財産や债務などの状況を調査し明白にすることは至難です。
なぜならば、経営に携わる双方または一方は往々にして、巨額の財産を有すると同時に、また巨額な债務をも抱えており、訴訟過程において、虚偽の借用証書や挙証も多く見られるからです。また、個人経営に従事する当事者は、とかく経営過程において合法的な経営と非合法的な経営を混在させていたりするものです。
このような背景の下夫妻関係存続期間中に、一方または双方が経営活動に携わることから生じた債務は、経営活動の合法性および事案の実際の状況に基づいて、次のように、各事情に応じて取り扱うべきであると指摘されています。
① 夫妻関係の存続期間中、合法的な経営活動の従事から生じた損失に起因する债務は、夫妻の一方による経営か夫妻双方の共同経営かを問わず、夫妻の共同债務と認定します。
② 夫妻関係の存続期間中、不法な経営活動に従事したことから生じた損失に起因する債務は、夫妻双方が共同で当該不法経営活動に携わっていたか、または、経営にかかわっていたのは夫妻の一方のみですが、他方は一方が不法活動に携わることを知りながらも反対しなかった場合には、夫妻の共同債務として認定します。
③ 夫妻関係の存続期間中、夫妻の一方が不法経営活動に従事したことから生じた損失に起因する債務は、他方配偶者がそれを知らなかったか、または、事前に知ったが反対の意思表示をしていた場合には、当該債務は不法経営に携わった一方の個人偾務として認定し、処理すべきです。
3、夫妻の共同债務は連帯债務
中国は、「家庭における夫妻の地位は平等である」と規定します。
さらに、夫妻の共有財産については、「夫妻が婚姻関係存続期間中に得た以下に列記する財産は、夫妻の共同所有に帰する。
① 給料·赏与、
② 生産·経営の収益、
③ 知的財産権の収益、
④ 相続又は贈与によって取得した財産、ただし、本法第一八条第三号に規定する場合を除く、
⑤ その他共同所有に帰すべき財産」。
共同財産を共有とし、平等に処分する権限を認めていることから、共同債務の償権者に対して夫妻は债務を分担して平等に負担すべきとするのではなく、夫妻双方のいずれもが全共同債務の返済義務を負うとすべきで、债権者は夫妻のいずれの一方に対しても全價務の返済を求める権利を有するのであって、夫妻の共同債務は連带债務です。
ちなみに、判例では、次の債務を夫妻の共同债務としています。
① 婚姻後、夫が営業業務を推進するために、職場から借用した金錢。
② 身体障害者である妻の出産および疾病治療のため、夫が職場および親族に借りた金銭。
夫妻の個人債務
夫妻の個人債務とは、夫妻の一方婚姻前に負った债務、婚姻後に共同生活に関係なく生じた债務および夫妻の一方が負担すると約定した债務をいいます。具体的には次のとおりです。
1、夫妻の一方が婚姻前に負った债務
ただし、財物の購入や家屋の修理·建築から生じた債務で、これらの財物が夫妻双方の婚姻後に夫妻の共同財産に転化した場合は例外です。
2、夫妻の一方の個人経営から生じた债務
夫妻の一方が自らの名義で個人経営などに従事し、当該経営の利益が夫妻の共同財産に算入されたことがなく、また、夫妻の共同生活に使用したこともない場合、当該経営から生じた債務は経営に従事した一方の債務とします。
3、夫妻の一方が無断で非扶養者に与えた経済的援助による债務
夫妻の一方が他方の同意を得ずに、無断で夫妻双方のいずれも法定扶養義務を有しない親族および友人に経済的援助を与えることから負った债務です。
4、夫妻の一方の私欲目的行為による债務
共同生活に関係なく、夫妻の一方が個人の私欲を満たすために、節度なく金銭を使用することや享楽にふけることから負った債務。例えば、夫妻の一方が賭博、飲酒等から負った偾務の場合です。
5、夫妻双方が一方の負担と約定した债務
夫妻双方が一方の負担と約定した債務も個人债務とします。ただし、法的義務の回避、国家·集団および第三者の利益の損害を目的とする夫妻双方の約定は無効です。そのような場合、当該債務は夫妻の共同债務として処理され、夫妻が共同財産をもって弁済しなければなります。
6、個人が負担しなければならないその他の债務
離婚後の生活状況の変化に対応するために、裁判官は公平の見地から酌量することができます。例えば、夫妻の一方が婚姻目的を達成させるため、婚姻前に故意に自らの疾病を隠蔽し相手を騙した場合、裁判官はその裁量をもつて婚姻後に当該疾病の治療により負った债務を騙した方の個人債務とすることができるとされます。 |