中国における企業間取引では、支払遅延や不払いが多発しており、債権回収は、企業経営の最大の課題の一つとなっています。従来、日系企業は、主としてほかの日系企業を取引先とすることが多かったのですが、中国国内の販売拡大に伴って、非日系企業との取引も多くなっていますので、それぞれの状況に応じて債権管理は、リスクマネジメント上も重要なポイントになるものと思われます。
1、当事者間交渉
債権者の自主的な債務弁済を促すため、電話による督促や、郵送・ファクスによる催告書の送付といった方法が多く用いられます(支払の督促)。通信による催促は、最も簡易で低コストというだけではなく、訴訟時効の中断や証拠の確保といったメリットもあります。中国法においては、これらの方法で督促がなされれば、その度に時効が2年間延長されます。
ただし、債務者がそのような事実はないと主張してくることもありますので、たとえば電話による督促の場合には、その日時、通話相手の氏名、通話内容を書面に残しておく、さらに録音しておくことも考えられます。
また、中国には、日本の内容証明郵便制度に相当する制度がありません。郵送する催告書の内容については、未払い金額を明記するほか、契約関係の事実、履行期限、損害賠償責任なども記載することが望まれます。
いずれにしても、債務者から支払ってもらえるよう粘り強い交渉をすることが重要となります。債権回収の合意に達したときは、書面をもって、債権債務の確認、新たな返済期限、回収金額の減額、遅延利息などを約定するのがよいでしょう。つぎに、強制執行力のある公証手続(執行認諾付公証証書の作成)を行うことにより、債務者が当該合意に従って履行しない場合に、債権者は、訴訟提起することはなく、人民法院に対して直ちに当該合意の執行を求めることができます。
2、地元政府への協力要請
一般的に中国の政府官庁は、企業に対して強い指導力を持っています。特に国有企業の立場からすると、政府はそのオーナーということになります。過剰な期待をすることはできませんが、行政の介入による債権回収という方法も、場合により考えられます。
3、法的手段の検討
訴訟等の法的手段による債権回収の留意点として、次のことがあげられます。なお、訴訟は、多大な労力や費用が必要となるにもかかわらず、予想どおりの結果になるとは限らないことにも注意が必要です。
- 資産調査
- 人民法院の選択
- 財産保全の申し立て
- 判決の強制執行
- 仲裁の利用
中国では、債権回収会社の存在がまだ正式に認められません。一部の債権回収会社には、脅迫などの違法手段を用いるものもありますので、債権回収会社に依頼する場合には、違法行為に巻き込まれないよう細心の注意を払う必要があります。 |