母親の一方的な子の姓変更と父親の扶養費支払い拒絶
離婚後養育親が一方的に子の姓を変更した場合、他方の親はそれを理由に子の扶養费支払を拒絶することはできない。
離婚後、養育親(母親)が元配偶者への恨みやその他の理由で、元配偶者の同意を得ずに子の姓を一方的に変更することが少なくありません。女性の地位·意識の向上も影響し、離婚後に母親が勝手に父姓を称していた子の姓を変更しますので、父親は子との同居ができないのみならず、姓すらも異なることになるのでは、親子の絆はどこにあるのだと憤慨して、子の扶養料支払を拒絶する紛争が発生し、実務上解決の困難な問題とされました。
姓氏には血縁上の要素が含まれるとはいえ、それは今日では絕対的な要素ではありません。子の姓名はあくまでも子を表すための符号にすぎず、子の姓の変更によって親子関係が変更·断絕されることはありません。離婚後、養育親が一方的仁子の姓を変更したことに対抗して、他方の親が子の扶養费を拒絶することは、扶養義務不履行に該当します。
子の姓変更事例
離婚後、養育親が一方的に子の姓を変更した事例には、子の姓を自らの姓に変更する場合と再婚配偶者の姓に変更する場合が多く見られます。
1、再婚配偶者の姓への変更
子の姓を再婚配偶者の姓に変更した場合に関し、父または母が一方的に子の姓を継母または継父の姓に変更したことによる紛争については、子の姓を元の姓に回復するように命じなければならないとされています。
判例には、父親の面接交渉を無視し、さらに、他の男性との再婚後子の姓を一方的に子の継父の姓に変更した母親に対して、判決発効後一か月以内に、子の姓を元の姓(実父の姓)に回復させるように命じたものがあります。
2、離婚後養育親の姓への変更
子の姓を離婚後養育親の姓に変更した場合については、学說上、肯定說と否定說の対立が見られます。
(1)否定說
子の姓の決定権は父母双方に平等にあり、父母の協議によって決めます。いったん子の姓が決定され
た以上、父母の一方が勝手に子の姓を変更することはできないと解するのが婚姻法の原則に合致します。婚姻法および司法解釈上も、父母の一方が他方に相談することなく一方的に子の姓を変更することができる旨の規定は見当たらないことを理由とします。
(2)肯定說
否定說に対して、肯定說は子の利益を考慮し、子に民法上の氏名権を有することなどを理由としています。
3、実務上の対処方
実務上は、離婚後に養育親が子の姓を変更しようとする場合、まず元配偶者の同意を得なければなりません。元配偶者の同意が得られない場合は、子が満10歳に達していれば子の意見を求めてから姓変更の認否を決めなければなりません。子が10歳未満であれば未成年者の権利保護から、子の健康な成長の保障·保護原則に基づいて、姓変更の認否を決めなければならないとされています。子が成年に達した後は自ら変更することができます。 |