四級二審制度
中国の裁判所【人民法院】は、海事・軍事・鉄道などの特殊裁判所【専門法院】を除き、通常の裁判所は四級に分かれています。原則二審制を採用しており、当事者が第一審判決に不服がある場合には、上訴することができ、そこで最終審となります。
- 最高人民法院(北京)
- 高級人民法院(省、自治区、直轄市)
- 中級人民法院(直轄市、省/自治区所轄の市と地域、自治州)
- 基層人民法院(県及びその所轄市、自治県、市所轄の区)
時効
訴訟提起にあたっては、まず時効の確認をする必要があります。中国法(民法通則、契約法など)に規定される訴訟時効は、民事事件で2年、人身傷害による損害賠償やリース代金の不払いなどの事件は1年、国際貨物売買契約や技術輸入契約に関する事件は4年とされています。
時効を中断するためには、時効前に訴訟を提起するほか、義務の履行を要求し続けることや債務者が債務の履行に同意した、などの証拠を残しておくことが重要です。時効は中断された時点から改めて計算されます。
管轄
契約当事者は、契約において、契約の締結地もしくは履行地、係争対象財産の所在地、または締約当事者の住所の所在地の人民法院の管轄を約定しておくことができます。また、係争金額や案件の情状により、基層人民法院ではなく、中級や高級人民法院第一審の裁判所もあります。
被告である外国企業が中国国内に駐在員事務所を有する場合、駐在員事務所と係争事実との関係性を問わず、その所在地の人民法院に管轄権がみとめられます。
管轄権につき異議がある場合には、その旨を明確に申し立てなければなりません。管轄異議を申し立てずに答弁した場合には、当該人民法院の管轄権を認めたとみなされる恐れがありますので、注意する必要があります。
契約において、万の一の紛争に備えて、法律に従って管轄地となりうる地域を合意しておくことも可能です。ただし、級別管轄を約定することはできません。
訴訟書類の送達方法
訴訟書類(司法文書)の送達は、一般に手渡しされ、受取証【送達回証】に署名を要求されます。外国企業の場合、外交ルートなどを通じた送達に加え、駐在員事務所に対する送達も実務では広く使われています。
答弁書などの提出期間が短いので、とくに駐在員事務所が訴状を受領した場合、すみやかに訴訟対応を行うことが必要です。
財産保全と先行執行
判決が執行困難またはそのおそれがあると思われる場合、当事者は財産保全を申請することができます。また、人民法院も自らの裁量で財産保全を命じることができます。労働報酬請求事件などの緊急性がある案件については、人民法院が当事者の請求に応じて、義務を負う者に対し判決に先行して一定金額の金銭や財物の支給を命じることができます(この措置を先行執行【先予執行】といいます)。
財産保全の対象は、訴訟請求の範囲内または係争に関連する財産に限定されています。前者は、金銭債権のために保全される財産の価値は債権金額を超えてはならないとされ、日本の仮差し押さえに類似し、後者は、日本の係争物に対する仮処分と類似しています。
また、財産保全の申立人は、人民法院から担保を要求されることがあります。
なお、緊急の場合、利害関係人として提訴前に財産保全を請求することもできます。先行執行を請求するには、当事者間の権利義務関係が明確であることや緊急の必要性があるなどの要件を満たさなければなりません。
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