企業と従業員が協議して合意すれば、労働契約を変更することができます(労働契約法35条)。これにより、労働契約の内容を変更するには、当事者間の合意が必要であり、企業が一方的に労働契約を変更し、従業員の務内容、勤務場所、賃金などを調整する行為は認められません。
しかし実務では、労働契約や就業規則で、「企業が生産状況に応じて従業員の勤務場所、勤務内容等を調整することができ、従業員は正当な理由なくこれを拒否してはならない」という内容を約定するケースが非常に多く見受けられます。
現在、この種の約定は、労働契約法26条1項2号に定める「企業の法的責任を免除し、従業員の権利を排除した」ものに該当するとして、無効であるとする見解が通説となっており、実務上、企業の一方的な労働契約の調整を無効とした判例が数多くあります。これは日本における実務よりも企業側にとって厳しいものであるといえるため、企業はこれに留意する必要があります。
賃金も同様です。実務では、昨年度に利益が出す赤字であることを理由としたり、あるいは特定の従業員の昨年度の成績が悪いことを理由としたりして、一方的に特定の従業員の賃金を引き下げる企業もあります。しかし、従業員の同意を受けないこのやり方は違法となるため、留意する必要があります。なお、企業に就業規則3条件を備える考課制度がある場合には、企業は当該考課制度に従い成績の悪い従業員の賃金を引き下げることが可能となります。
労働契約の変更時の注意点
- 労働契約の内容(勤務内容、勤務場所、賃金)を変更するには、従業員の合意を受ける必要があり、企業が一方的に調整できる旨の約定をもって勤務内容、勤務場所、賃金の調整を強行することは違法。
- 労働契約を変更するには、書面で行うべき。
- ①労働能力の欠如、②業務に堪えられない、③客観的状況の重大変化、④就業規則への重大違反の場合、企業は一方的に労働契約の内容を変更することができる。
- 職場結婚した従業員に対する一方的な職場調整または解雇は違法。
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